「今こそ、国境を越えて美と調和の教育を」
第32回 InSEA 世界大会 2008 in大阪大会会長
平山郁夫(日本美術院理事長、ユネスコ親善大使、前東京芸術大学学長)

この度、国際美術教育学会(InSEA)世界会議日本大会2008の会長に就任することになりました。美術教育の国際交流と発展に尽力申し上げたいと願っております。
近年、私は各国の文化を積極的に守るように、国連を初めいろいろな方面に働きかけてまいりました。時として紛争のさなかにも世界中のいろいろな場所を訪ね、文化財の保護や文化の国際交流を行い、様々な世界会議へも積極的に関わってきました。
それは、芸術や文化こそが世界中の人々が手を取りあっていくための、最も大切な紐帯であるとの私の信念に基づいています。先の大戦中でも古都フィレンツェ攻撃をドイツ軍に断念させたのは文化に対する尊敬の思いでありましたし、UNESCOの「世界遺産」はそれぞれの地域の文化遺産を世界中で守っていこうとする私たちの思いを表現していると言えるでしょう。高句麗の遺跡が世界遺産になることで、私たち日本人は様々な障壁を越えて朝鮮の人々との絆を深く理解できるのです。UNESCO と浅からぬ関係にあるInSEAの場で、世界中の美術教育者が相互理解を深めることは、まことに大いなる意義があると申せましょう。
私たちが携わっている美の世界は未来を開いていくものでもあり、時として美は憎しみや悲しみの泥の中から蓮の花を開かせるような力を持っています。未来を託す子ども達への教育には、とりわけ美の教育が大切です。伝統的な美と新しい美。子どもたちの生活や感情の奥底にそれぞれの美を根付かせることが、今ほど求められている時代はないでしょう。美の文化はどの国においても、その国民一人一人の人格の基礎をつくっているものですから、美の教育は偏狭なものであってはなりません。そのために図工科や美術科は、他の教科と力を合わせて子どもの感性に働きかける必要もあるでしょうし、自由に表現することと同時に、しっかりと鑑賞することも大切になってきます。美術の先生や研究者の方々がこのような広く調和的な教育の視野を持つことは、迂遠なようですが、子どもたちの未来の生を、そして世界を、調和に満ちたものに変革する力へ連なっていると信じております。この機会を生かして美術教育に携わっておられる多くの皆さまが、世界の美術教育者たちとともに視野を広げ、連帯し、美と調和の教育を探究されることを心から祈念するものです。
第32回 InSEA 世界大会 2008 in 大阪に寄せて
郭禎祥 (InSEA会長)

As President of the International Society for Education Through Art (InSEA), it is my great honor and pleasure to invite art educators from around the world to the very special and well-organized 2008 InSEA World Congress in Osaka, Japan.
What makes InSEA unique in the world of art education, is that it is an international organization, a global network of those who believe that art education is advanced through international contact and exchanges. InSEA World Congresses bring together art educators from different countries, regions and cultures and provide opportunities for sharing, discussing, and deliberating on issues in art education from international perspectives.
This conference is meant to inform and inspire our colleagues from all over the world. InSEA has its own longstanding tradition of international congresses. Every three years there is a large InSEA World Congress. The last one took place in Viseu, Portugal, March, 2006, and it was a most happy and inspiring one.
The InSEA World Council members and I are very anxious to attend the 2008 World Congress in Osaka, Japan. Those members who participated in the Viseu, Portugal World Congress have been greatly inspired by one of the World Council member Mr. Fukumoto's very thoughtful invitation. We all do expect a super World Congress in Osaka in August, 2008.
InSEA世界大会in大阪に寄せて
大会副会長
大阪教育大学名誉教授・大阪芸術大学客員教授
花篤 實
今回の大会会場である国際交流センターは、作家司馬遼太郎の出身校である大阪外国語大学の跡地であり、大阪の上町台地に位置する夕陽ケ丘にある。近くに聖徳太子建立の四天王寺があるが、この地は遣隋使や遣唐使などの渡航地、つまり上古からの海外交流の玄関口であった。当時難波津といわれる大阪湾に面して赤々と落ちる夕日の名所であったようだが、そこから大和の地に通ずる当時の国際大通りというべき街道ロの入り口でもあった。今回INSEAの世界大会がこの場所て開かれるというのも、何か大きなえにし(縁)のような気がする。
アジアで開かれる大会ということで、その経緯も含めて、今回はアジアでの開会という視点を,出来うれば大会の中に投影できればという願いが有る。今一つINSEA大会は、研究発表や討議を含めた研究交流の場であると共に、様々な国の多様な文化を持った人々が、美術を通しての教育という共通の軸に依って手をつなぎ合う幅広いフェスタの機能がある。ともすれば停滞を指摘される我が国の美術教育の活性化の為にも、いろいろな場に
ある人の参加を図る開かれた形にしたいという願いが、他国では見られない公開授業を軸にした現場の先生方の集まりである全国大会をINSEAに重ねた企画として見てほしい。
InSEA世界大会に寄せて
聖徳大学教授・元文部省視学官
遠藤友麗
本年InSEA日本大会が大阪にて開催されますことは、世界のスポーツの祭典オリンピックは中国で、美術文化の振興は日本でという、いずれも東洋を代表する隣同士の国での開催という面からも大きな意義のある大会であると思います。
特に今回、私にとっては画業・教育観共に学生の頃から現在まで深き師でもあり芸術文化の世界的な振興・修復に当たっておられる平山郁夫先生に会長としてお出まし頂き開会のご挨拶をして頂くことに感激の念を強く感じます。
すでに21世紀初発の改訂学習指導要領が告示されましたが、今回の改訂の基となった平成17年2月に文部大臣が中央教育審議会に諮問した「教育課程改訂の諮問事項の第一」に、遙か昔に中教審が発足して以来初めて「感性の育成、芸術教育の改善」が掲げられました。私たち芸術教育関係者は「やっと芸術教育の重要性に目が向けられた」と喜んだのでしたが、結果として中教審は学力向上対策に終始し、感性の育成と芸術教育の改善・振興はどこかに霧散してしまい、授業時数も学力教科と体育以外は増加されない遺憾な結果となってしまいました。
しかしともあれ、私たちはより一層世界中が手と心と理念を結び合って美術教育の指導方法の工夫と実践を深めていかなければなりません。ここに今回の日本大会がその再出発になり美術教育の振興の大きな輪になって広がっていくことを願ってやみません。
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