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我が国では教育基本法の改正など、教育の再生を目指す動きが活発化しておりますが、その中でややもすれば基礎的な学力の向上のみが注目され、芸術教育が軽視される傾向にあります。しかし、視覚表現及び鑑賞活動を通じて美的感性を涵養し、伝統・文化の継承と再創造によって心の教育を豊かにすることこそが、真の学力形成につながる鍵だと考えます。
2006年3月に開催されたユネスコ芸術教育世界会議(ポルトガル、リスボン)では、各国が国際競争力を高めるために、創造性を育成し文化力を高めることが不可欠であるという認識に立って芸術教育を創造性開発や産業との関連の中で重視し、国策として基礎教育の一翼を担うものとして位置づけようとする世界的な潮流があることが報告されています。近隣アジア諸国においては、特に中国、韓国が国際競争力維持のために基礎科学と同様に芸術教育の重要性を認識して、芸術関連産業の育成などを強化しています。今後、わが国でも芸術とテクノロジーを融合する産学連携、マンガあるいは日本の伝統文化を文化戦略ツールとして活用することが国策としても重要になるのではないでしょうか。
わが国では、平成19年度に教育関連3法が改正されると同時に、学習指導要領が改訂されましたが、図画工作科、美術科、芸術(美術・工芸 )の行方は今後どうなるのでしょうか。教育改革の論議の中で子どもたちの美的感性や想像力の育成を保障し伝統文化への意識を高める方策を確固たるものにすることが一層求められます。2005年に文科省がベネッセに委託して実施した義務教育の意識調査では、一般の人たちの学校教育における美術教育への役割期待は決して大きいものでないことが示されました。そうした認識を転換していく上でも、何らかの社会的アピールにつながるような世界大会が望まれていると言えます。
2008年のInSEA世界大会では、メインテーマを「こころ+メディア+伝統」として、視覚美術を中心とした芸術教育の教育的意味と社会的有用性を国際的な視野で再検討することが第一義的な目的になると考えました。また、こうした芸術教育の枠組みの価値にとどまらず、より広い見地に立てば、以下のような国際平和を希求する意味もあると考えることができます。
東京オリンピック開催翌年の1965年に開催されたInSEA東京大会での挨拶文の中で英国の著名思想家サー・ハーバート・リード氏は、「人類を悲劇的結末へと押しやる潮の流れから、自らを救い出す唯一の道は、手を使う技術や感覚的識別の手順を伴う、あのさまざまな活動にもどることであります。こうした活動は本質的に美学的な過程ですから、教育は感覚面の教育、即ち『美術を通しての教育』に集中しなければならないというのが、われわれの主張のすべてであります」と述べました。21世紀においても世界はテロをはじめとした紛争や環境問題などにより混迷を深めています。こうした状況の中で芸術教育が世界の子ども達の未来形成に貢献するための先導的な役割を担うべきものであるとの認識を喧伝することが本大会の究極的な意義であると考えます。
InSEA World Council 理事(アジア地区代表) 福本謹一(兵庫教育大学) |